「行動展示」を実施して、一躍有名になった旭山動物園。
動物の姿形だけではなく、動いている様子、その種らしい自然な行動の様子を見られるようにするには、展示施設の構造を工夫することに始まり、さまざまな研究と試行錯誤が必要だったであろうこと、そしてそれを維持していく努力も必要だろうことが容易に想像できます。
今でこそ、いろいろな動物園が展示方法の改善に取り組んできていますが、やはりここ旭山動物園が先駆者的な役割を果たしており、その方法も非常に大胆かつ徹底していると思います。
実際に行ってみて、有名なペンギンの散歩以外にも、さまざまな工夫を凝らした展示を見ることができました。
また、地元の親戚の方のご好意で、関係者の方に案内をしていただくことができ、短い時間でしたが貴重なお話を伺うことができました。
ペンギンの散歩はやっぱり楽しかったです。
すべてはペンギン任せ。ペンギンのペース。とってものんびりと歩いてきます。
でも、いったん視界に入れば、その愛嬌たっぷりの仕草に釘付け。まだかまだかとしびれを切らして待っていた人たちも、ペンギンが近づいてくると満面の笑顔です。
行列からあんまり遅れたり、他所へ行こうとしたりするペンギンがいると、飼育員さんが後ろへ回って誘導。
ペンギンの散歩は、飼育舎の外に出て、まさに目の前で行動してくれるわけですが、飼育舎そのものも、いろいろな角度から見られるように工夫されていました。
特に、プールの中を通り抜けるように作られたトンネルがよかったです。泳ぐペンギンを、こんなふうに下から見上げることができます。
目的はそれぞれちょっと違いますが、下から見上げる目線は、他にもいろいろな飼育舎で使われていました。
エゾシカ。
ヒョウ(ユキヒョウだったような)。
アオダイショウ。
レッサーパンダが渡る吊り橋。
ペンギンと並ぶ人気の、ホッキョクグマ館のシールズアイは、獲物であるアザラシ(シール)の目線からホッキョクグマが見える、というもの。
氷の割れ目から顔を出したアザラシをホッキョクグマが狙う、という構図。
これが、実際のシールズアイ。
基本的には一人ずつ、あるいはカップルや親子単位でしか入れないサイズの覗き窓がひとつ(プラス子供用ひとつ)しかないので、当然、行列ができます。この日は、待ち時間10分程度とかだったので並びましたが、夏休みのピーク時期などは1時間以上にもなるそうです。
クマは近くにいたらしいのですが、あいにく、窓の周りに雪が積もっていてよく見えませんでした。後ろで人が待っているので、見えるまでねばるというわけにもいきません。
そのかわり、オオカミ館にあった同じような窓からはばっちり見えました。
こちらは、穴から顔を出したノウサギ、という設定のようです。
動物の習性がうまく利用されていて非常におもしろかったのが、あざらし館のこのチューブ。
氷の穴(割れ目)を模したチューブが、展示室の中を抜けるように作られており、見ている人たちの目の前を、あざらしが上下に行き来します。大きな動物なので、表情まではっきりわかるほどの近さです。何だか楽しそうに、気持ちよさそうに泳いでいる様子が、印象的でした。
寒いところの動物たちだけでなく、サルの仲間の飼育にも力が入れられていました。
特にチンパンジーについては、群れで飼育する試み、食性の問題など、詳しいお話を伺うこともできました。
展示施設は、本来の身体的な能力を生かすために、全体的に高さのある構造になっていました。また、種類による手足の使い方の違いに合わせて設計されています(ぶら下がるかつたい歩くか、反動を付けてジャンプするかどうかなど)。
ただし、冬季は室内飼育のみになっています。
チンパンジーの屋外飼育場。
中央のガラス張りの部屋の中に人が入るようになっています。
チンパンジーが、檻の中の人間を観察するような感じ。
高さ16mあるオランウータンの屋外飼育場。
さすがのオランウータンも、初めはまったく渡ろうとしなかったので、飼育員に渡らせようとしたり、好物の巨峰を使ったりしたそうです。
屋内も、高さのある構造。
脱走防止や安全性の問題をクリアしつつ、動物たちの行動を最大限に引き出すことができるような、こうした大胆な展示施設が実現するまでには、もちろん、既存の資料の応用だけでなく、現場での議論や試行錯誤の積み重ねがあったのだそうです。どこの動物園でもそうした工夫はしていると思いますが、特に旭山動物園では、妥協のなさというか、とことん追求するというような意気込みを感じました。
何やら肩身の狭い思いがしなくもないです…。
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