2010年7月2日

Princess Parrot Expedition 2010 -その3 テンニョインコについて

テンニョインコ(Princess Parrot Polytelis alexandrae)はオーストラリア中部に固有の中型インコで、IUCNレッドリストではNT(準絶滅危惧)に指定されています。しかし、移動性の高い種であるために実際の生息数や生態を把握することが難しく、実態はほとんど明らかになっていません。オーストラリアのバーダーにとってさえ”mythical”、つまり伝説的・神秘的なイメージ漂う鳥であり、おなじみのSlater図鑑(The Slater Field Guide to Australian Birds)には、「分布域の境界を正確に示すことは不可能であり、いつどこで見られるかを正確に予測することもできない」とまで書かれています。
ただし、飼い鳥としてはそれほど珍しくなく、飼育下繁殖の個体数は安定しています。
オウムやインコには、このように飼い鳥としてよく知られたものでも野生下では絶滅が心配されているケースがままあります。途上国で乱獲され、ペット用として裕福な国に送られている実状があるのは悲しい話です。(詳しくは World Parrot Trust を参照)
ちなみに、オーストラリアでは野生動物の捕獲・飼育は原則禁止です。

ジュピターウェルに向かう直前、アリススプリングスの飼育施設で飼育個体を見てきました。


野生下でのおもな生息環境は、内陸の砂丘で灌木とまばらな樹木が見られ、地表にスピニフェクス(先の尖った非常に硬い葉を持つイネ科Triodia属の植物)が生えているような場所です。
スピニフェクス(Triodia)と灌木の茂る砂漠
採餌は、地上で草の種子を食べたり、灌木で花や蜜、葉を食べるということですが、いずれも目撃例が少なく、詳しくわかっていません。例えば、内陸の生物の餌資源として重要なスピニフェクスの種子を食べるのかどうかという点についても、食べるという話もあれば、あまり食べないという意見もあります。
(参照:Higgins, P.J. 1999. Handbook of Australian, New Zealand and Antarctic Birds: Volume 4. Oxford University Press, South Melbourne.)

今回向かったジュピターウェルでは、ほぼ毎年、目撃例があるということですが、そのほとんどは上空を飛んでいったのを見たという、かなり偶発的なもの。しかも、ジュピターウェル周辺の環境がとりたててよいということではなく、単に、他にアクセスできる場所がほとんどないのです。
そういうわけで、そもそも、かなり大雑把な探索行だったわけですが、ほかに確実な手段がないわけですから、行ってみる価値はある。でも、相手は天候その他の状況によって自由に移動してしまう、ということで、いわば出たとこ勝負だったのでした。

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