6月10日(続き) カルンバから南下
カーペンタリア湾に面したカルンバの町からマウントアイザ方面へ南下する道の途中に、バーク&ウィルスというロードハウスがあります。これは、1860年にアデレード近郊から北上してオーストラリア内陸部の縦断に挑戦し、縦断は成し遂げたものの悲劇的な最後を向かえた有名な探検隊にちなんだ命名。この辺りには、探検隊のキャンプ跡地や記念碑などもあります。
Burke & Wills Roadhouse
バーク&ウィルス探検隊については以下の書籍に詳しく書かれています。
アラン・ムーアヘッド 『恐るべき空白』 (早川書房)
また、椎名誠さんがこの探検記に触発されてほぼ同ルートを旅行したようです。
椎名誠 『熱風大陸-ダーウィンの海をめざして』(講談社)マウントアイザへ向かう途中の一泊は、道路脇のレストエリア(Terry Smith Lookout)でした。かろうじて屋根付きのテーブル/ベンチとトイレがあるだけの広場で、まったくの道ばた。この辺りのハイウェイ沿いによくある、ごく普通の施設です。キャンピングカーが何台も止まっていてほとんど満員でした。風が強く、持参したガスコンロでお湯を沸かすのにひたすら時間がかかりるのには困りました。夜は眠っていても、ロードトレインが通るたびに地響きで目が覚めてしまうので熟睡できないし、翌朝はひたすら寒く、逃げ出すように出発しました。
Terry Smith Lookout(レストエリア)
11日 マウントアイザ~カムーウィール
マウントアイザでのメインイベントは、買い物。水、食料、燃料などの買い足しです。今回、料理をする気がなかったので食料はすべてレトルトか乾物。重宝したのが、お米メーカー「Sunrice」が出しているレトルトのタイカレー。ご飯とカレーが別になっているので値段のわりにはおいしいです。
予想以上に涼しかったのであまり心配する必要はなかったかもしれないのですが、生野菜や生物は保存に困るので基本的になし。ノーザンテリトリー(北部準州)に入る時に検疫があるかも?と思ったので、果物も少量のみ。また、ノーザンテリトリーではアルコールの規制が厳しくなるので、お酒の買い足しもなし。持参したラム酒一瓶がなくなったあとは、ジュピターウェルからアリススプリングスに戻ってくるまで一切ノンアルコールでした。冬だから苦にならなかったけど、夏だったらビールが飲みたかったかもしれない。
マウントアイザは鉱山街で、高い煙突から煙がモクモク出ている健康に悪そうなところですが、さすがに資源で潤って裕福なだけあって、街としての設備は整っているようでした。ショッピングセンターもそこそこ混んでいて活気がありました。
ここから先、道は西に向かいます。移動中は猛禽が多く見られ、道路脇にはチャイロハヤブサとオーストラリアチョウゲンボウ、路上には動物の死体を食べにたくさんのトビやフエフキトビ、それに混じってオナガイヌワシも下りていました。
オナガイヌワシ
この日はカムーウィールという街からさらに20kmほど離れた場所にあるCamooweal Caves National Park内のキャンプ場に泊まりました。
Camooweal Caves National Park キャンプ場
クリークのそばで、珍しく他に人もいなくていいところでした。鳥の種類も多く、特にインコ類は、アカオクロオウム、モモイロインコ、マキエゴシキインコ、セキセイインコ、オカメインコ、クスダマインコなどたくさんの種類が見られました。
12日 デビルズマーブルズ
カムーウィールの街を出て西へ向かうと、すぐにクイーンズランド/ノーザンテリトリー州境があります。両側に看板が立っているだけ。
QLD/NT州境
マウントアイザの周りは山がちで変化のある地形でしたが、州境を越えるとひたすら平坦でまっすぐな道が続きます。普通の乗用車はあまり通らず、キャンピングカーかロードトレインばかり。牛を運ぶロードトレインが多かったです。
このときは知らなかったのですが、途中のロードハウスはハイイロハヤブサのポイントだったとか。帰りに探しましたが、見られませんでした。
マウントアイザから西に向かっていた道は、やがてオーストラリア内陸部を縦断するスチュアートハイウェイに合流します。合流地点の名前がスリーウェイズ。わかりやすいですね。ここからアリススプリングスを目指して南下します。この日は、奇岩で有名なデビルズマーブルズのキャンプ場に宿泊。満員でしたが、巨大な丸い岩が無数に転がっていて、不思議なところでした。そして、ひたすら寒く、朝は0度を下回っていたかもしれません。案内板によれば、いろいろとおもしろい動物がいそうだったのですが、寒すぎるし、人が多いので特に探さず。岩場を歩き回ったあとは、さっさとテントに引きこもってしまいました。
13日 アリススプリングスに到着
アリススプリングスに着いてまず目指したのが、アウトドア用品店。防寒具と、風が強くても使えるバーナーを買うため。ところが、9時開店のはずのその店はまったく開く気配がなく、ショッピングモールも閑散としている…「時差があるんだっけ?」 そうなんです。クイーンズランドとノーザンテリトリーでは30分の時差があったんです。30分遅い。道理で、朝になってもいつまでも暗いと思った…。
仕方ないので、暇つぶしに植物園へ。ここで思いがけず、サービス精神の旺盛なニシマダラニワシドリに会えました。穴場か?と思いきや、あとでジュピターウェルで合流したDon Haddenさんの写真集にも載っていたので、よく知られた場所のようでした。
ニシマダラニワシドリ
ニシマダラニワシドリの「庭」
結局、高い上着には手が出せず、買ったのはいわゆるババシャツとモモヒキ。でもこれがあるだけで相当違いました。ここまで寒いとは思わなかった…。
この日はアリススプリングスのホテルに宿泊。久しぶりのシャワーと洗濯ができました。
14日 オーミストン渓谷
アリススプリングスの東西にはマグダネル山脈が連なり、あちこちに渓谷があります。
この日は2ヶ所を訪れ、そのうちのひとつ、オーミストン渓谷のキャンプ場に宿泊。ここも満員でしたが、周りに鳥が多く、トイレ・シャワー設備もあるいいところでした。その分、料金は公営のキャンプ場にしては少々高め。
テントを張ったすぐ裏に、ショウキバトが採餌にやってきました。「ポポー」とか「ククー」とか小声でなきながらちょこまか歩き回る、非常にかわいらしいハトでした。ハトの世話をするようになって以来すっかりハト好きになっているので、もうこれだけで幸せ。
ショウキバト
15日 エラリークリーク
オーミストン渓谷から4時間コースの登山道を登り、エミュームシクイなどを探しました。特殊な環境にしかいない鳥なので登山道を全部歩く必要はないし、後半は川の水が多いと濡れることになりそうだったので、3分の1程度まで行って引き返してきました。結局、エミュームシクイは見られませんでしたが、ハシボソセスジムシクイ、ムナグロオーストラリアムシクイ、マルオセッカなどが見られました。
涼しくて、歩きやすかったです。オーストラリアはどこに行っても、だいたい暑くて歩くのがイヤになるけど、これだけ涼しいと登山もいいなーと暢気に考えていたら、巨大なザックを背負ってボロボロのTシャツを着た山男のような人が向こうからのしのし歩いてきました。マグダネル山脈には、ララピンタトレイルという縦走ルートのようなものがあるので、それを歩いている人だったようです。縦走といっても全体を一気に歩くのではなく、いくつかに区画が分かれていて、それぞれ日帰りだったりキャンプが必要だったりするようです。観光局のサイトによれば、全行程で20日間、225kmだとか。冬ならいいけど、水場がなさそうだし全く日陰がないので、夏は無理だろうなあ。
http://www.australia.com/jp/itineraries/nt_larapinta_trail.aspx
オーミストン渓谷の東にあるエラリークリークの登山道も歩きました。どちらも、背の高い木はごくまばらにしかなく、あとは灌木とスピニフェクスという植生で、見晴らしがいいです。ほんのちょっと登っただけで、周りには人工物がもう何もなく、車の音も聞こえず、人にもほとんど出会わない、手軽に山奥気分が味わえるうれしい所でした。ここにもハシボソセスジムシクイ、ムナグロオーストラリアムシクイ、カオグロモリツバメなどがいました。ほとんどの鳥は、こちらがじっとしていればかなり近くまで寄ってきてくれました。
この日はエラリークリークに宿泊。オーミストン渓谷はほとんどキャンピングカーばかりでしたが、ここはテント泊の人も多かったです。
16日 アリススプリングス出発
アリススプリングス・デザートパークという動物園のような施設に立ち寄りました。
中央オーストラリアのいろいろな環境を再現して、そこに住む動物(おもに鳥)を飼育していました。まだまだ新しいようでしたが、なかなかおもしろかったです。広い夜行性動物館もありました。ここでバードショーを見学したのですが、なんと主役はトビ(フエフキトビとトビ)。客席やステージの周りを、飼育員の合図(要するに餌)に合わせて、気持ちよく悠々と飛び回っていました。これでトビをかなり見直しました。
この後、アリススプリングスの街で四駆自動車を借り、空港に他のメンバーを迎えにいきました。フィル、ジェイコブ、アランの3人。フィルは相方が勤める鳥ツアー会社のボスで今回の旅行の計画者、ジェイコブはフィルの家にホームステイ中、アランはシドニーから来たトゥイッチャー。フィル以外とは初めてだったのですが、あいさつもそこそこに買い物、5人で1台じゃ狭すぎると文句を言いながらなんとか荷物を積み込み、そしていよいよジュピターウェルに向けて出発です。
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